組織マネジメントの基礎を固めたい方に向けて、本記事では、実践で使えるフレームワークや手法を解説します。組織マネジメントの成功企業の事例も紹介するので、組織の課題を解決したい管理職・経営者・人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
「チームの生産性が上がらない」「組織のマネジメントがうまく機能していない」と悩んでいる方もいるでしょう。組織改革を任された経営者や、日々のマネジメントに悩む管理職にとって、組織を適切に運営することは、企業の持続的成長に直結する重要な課題です。
本記事では、組織マネジメントの意味や目的などの基礎知識から、実践で使えるフレームワークまで解説します。組織マネジメントの成功事例もまとめているので、自社の組織改善に活かせる具体的なアクションについて検討している方は、ぜひ参考にしてください。

組織マネジメントとは、組織が掲げる目標を達成するために、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を効果的に管理・運用する活動全般のことです。
まずは、組織マネジメントの定義と5つの基本機能について解説します。
組織マネジメントとは、単に人を管理することではありません。組織というシステムを健全に機能させながら、個人の能力を最大限に引き出し、チームとして大きな成果を生み出すための仕組みづくりです。
経営学者であるピーター・F・ドラッカーは、マネジメントを「組織に成果をもたらすための道具・機能・機関」と定義しました。つまり、管理者が単独で成果を出すのではなく、メンバーの力を結集して目標を達成することに組織マネジメントの本質があります。
経営学者のアンリ・ファヨールは、組織マネジメントにおける管理者の役割を提唱しています。組織マネジメントの5つの基本機能は下表の通りです。
| 計画(Planning) | 現状を分析し、組織の進むべき方向性と目標達成のための戦略を立案する |
| 組織化(Organizing) | 計画を実行するために必要な組織構造を設計し、適切な権限と責任を与えて人材を配置する |
| 指揮(Leading) | ビジョンを共有し、メンバーを動機づけて目標達成に向けた行動を促進する |
| 調整(Coordinating) | 部門間の利害対立を防ぎ、活動を統合して全体最適を実現する |
| 統制(Controlling) | KPIなどを設定し、計画と実績の差異を分析して必要なPDCAを回す |
なお、5つの機能はそれぞれ独立しているわけではなく、相互に関連しながら組織マネジメント全体を形成しています。

現代において、マネジメントによる組織強化が重要視されている主な理由は以下の3つです。
現代のビジネス環境は、技術革新や市場の変化が激しく予測困難な状況にあります。そのため、企業には状況に応じて柔軟かつ迅速に対応できる適応力が求められます。
また、労働力人口の減少や働き方の多様化が進むなか、限られた人材の能力を最大限に引き出し、生産性やエンゲージメントを高める仕組みづくりも欠かせません。
なお、組織マネジメントは、環境・社会・ガバナンスに配慮したESG経営や企業の存在意義を重視するパーパス経営を実践するための基盤としても位置付けられています。このように、企業が持続的に成長しながら、競争優位性を維持していくためには、時代に即した組織マネジメントの強化が必要です。
人材育成マネジメントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:※3月KW「マネジメント 人材育成」

組織の現状分析および課題抽出の実践的なツールとして役立つのが、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した「7S」フレームワークです。このフレームワークでは、組織を構成する要素を「ハードの3S」と「ソフトの4S」の7つに分類しています。
| 大分類 | 小分類(7S) | 内容 |
| ハードの3S(短期間で変更しやすい) | 戦略(Strategy) | 競争優位を獲得するための方向性・計画 |
| 組織構造(Structure) | 部門の編成や指揮命令系統、役割分担 | |
| システム(System) | 業務プロセス、評価制度、情報システムなどの仕組み | |
| ソフトの4S(変化に時間がかかる) | 人材(Staff) | 従業員の質と量、採用と育成のバランス |
| スタイル(Style) | 経営陣のリーダーシップスタイルや社風・雰囲気 | |
| スキル(Skills) | 組織や個人が持つ独自の能力・専門性 | |
| 共通の価値観(Shared Value) | 組織文化の中核となる企業理念や信念 |
組織変革はそれぞれの構成要素から現状を把握し、整合性を図っていくことで効果的に進められます。「7S」フレームワークの構成要素について、以下で詳しく見ていきましょう。
戦略(Strategy)は「ハードの3S」のうち、会社が目指す方向性や長期的な事業計画、競争優位を獲得するためのロードマップを意味します。具体的には、国内シェアの拡大や新市場への進出など、組織がどのように戦っていくかを定める要素です。
戦略が明確でなければ、限られた経営資源を適切に配分できず、組織全体が同じ方向に向かって進むことが難しくなります。また、環境変化の激しい現代においては、状況に応じて柔軟に戦略を見直す機動力も不可欠です。戦略は単独で機能するものではなく、ほかの「S」と連動させることで初めて効果を発揮します。
組織構造(Structure)は「ハードの3S」のうち、役割や責任の分担、部門の編成、指揮命令系統など、戦略を実行するための組織設計を示す要素です。
業務を効率良く進める機能別組織や、柔軟性が高いプロジェクト型など、企業には目的に合わせた構造づくりが求められます。優れた戦略があっても、実行できる適切な組織構造が伴わなければ十分に機能しません。そのため、戦略に合わせて柔軟に組織構造を見直していく必要があります。
システム(System)は「ハードの3S」のうち、業務を効率化し、組織を効果的に動かすためのルールや仕組みを意味します。システムに該当するのは、主に以下のような制度や仕組みです。
また、業務をデジタル化するITツールの導入や、現場の意見を吸い上げるための1on1ミーティングなどもシステムに含まれます。こうした制度や仕組みは、組織構造という「骨組み」を実用化させる役割を果たします。
効果的な組織マネジメントにつなげるためには、形だけの制度にならないよう、現場で正しく運用されているかを定期的に確認し、組織のルールとして定着させることが重要です。
人材(Staff)は「ソフトの4S」のうち、組織を構成する従業員の質や、人材マネジメントの在り方を示す要素です。人材といっても単なる頭数を意味するわけではありません。企業には、戦略の実行に必要な人材像を明確にし、採用と育成のバランスを最適化することが求められます。
働き方の多様化が進む現代では、一人ひとりの価値観や能力を理解し、個々のポテンシャルを最大限に引き出す適材適所の配置がポイントです。時間をかけて人材を育成・定着させる仕組みづくりが、企業としての持続的な競争力につながります。
スタイル(Style)は「ソフトの4S」のうち、経営陣のリーダーシップスタイルや、トップダウン・ボトムアップといった社風を示す要素です。
失敗を恐れず挑戦できる心理的安全性があるか、意思決定のスピードは適切かなど、企業ごとのスタイルは職場環境に大きく影響します。ただし、企業ごとの独自のスタイルは長年培われた文化であり、一朝一夕では変えられません。
効果的な組織マネジメントを実現するためには、目指す戦略や価値観に合わせた変革が求められます。
スキル(Skills)は「ソフトの4S」のうち、組織全体、あるいは個人の従業員が持つ独自の能力や専門性を示す要素です。これには、営業力や技術力などのテクニカルスキルから、対人関係能力などのヒューマンスキルまで幅広い能力が含まれます。
具体的には、スキルマップを用いて従業員の能力を可視化し、計画的に育成することが組織の競争力強化につながります。
なお、各スキルを高めるためには、現場の課題に応じた研修の実施が効果的です。アンドアでは、現場での能力開発につなげるキャリア開発支援を行っています。詳細については、「キャリアオーナーシップ開発プログラム My inc.」をご覧ください。
共通の価値観(Shared Value)とは、組織文化の根幹をなす企業理念や信念を意味します。共通の価値観は「ソフトの4S」の中でも、ほかのすべての「S」を機能させるための中核となる要素です。事業の存在意義を組織全体で共有することで、メンバーの判断基準が統一され、強い一体感が生まれるからです。
価値観が浸透している組織は、変化に強く自律性が高いという特徴があります。また、戦略やシステムといったハード面を変革する際にも、共通の価値観とズレがないかを確認しながら進めていくことで効果が高まります。

ここでは、マネジメントで組織の課題を解決し、効率的かつ効果的に運営していくための具体的なアプローチを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
組織のマネジメント力を底上げするためには、新任管理職や経営層など、各階層の課題に応じた研修を実施することが重要です。役職や経験年数によって、求められるスキルが異なるからです。
例えば、新任管理職には部下指導や目標設定の基礎を、経営層には戦略立案や組織変革のスキルを学ぶ研修を提供します。それぞれの段階に適した体系的な育成プログラムを実行することで、組織全体のマネジメントが効率化されます。
組織マネジメントに関する研修は、外部サービスの利用もおすすめです。アンドアでは、体系的な育成プログラムの設計支援を行っています。詳細については、「対話を軸とした年間育成体系」の資料をご確認ください。
なお、マネジメントに必要なスキルについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:※3月KW「マネジメント スキル」
組織の生産性を高めるためには、ITツールを積極的に導入し、タスクの見える化と業務の属人化解消を図ることがポイントです。デジタル時代において、情報共有の遅れやタスクの抜け漏れは、組織の効率を著しく低下させる要因になりかねません。
具体的には、プロジェクト管理ツールを導入して進捗を一元管理できるようにすることをおすすめします。これにより、誰がどの業務を抱えているかが可視化され、メンバー間の相互支援が自然に生まれます。無駄な会議時間や管理工数も削減でき、より効率的でスムーズなマネジメント体制の構築が可能です。
組織マネジメントにおいては、タレントマネジメントを推進することも重要です。
タレントマネジメントとは、従業員の能力や経験などを才能や資質としてデータで一元管理し、適材適所の配置・育成・評価に活用する人材マネジメント手法です。一人ひとりの適性や能力を客観的に把握し、最適な人材活用を実現することで、組織全体の成果につながります。
例えば、スキルマトリックスを作成して人材の「強み」と「弱み」を可視化すれば、経験や勘に頼らないデータドリブンな適材適所の配置が可能です。これにより、従業員のエンゲージメントが向上し、限られた人材を最大限に活かせる組織運営につながります。

自社に適した組織マネジメントの手法を検討する際は、実際の企業の取り組みを参考にするのがおすすめです。
ここでは、組織マネジメントの効率化に成功した他社の取り組み事例を3つ紹介します。実際の企業がどのように組織の課題と向き合い、マネジメントに取り組んでいるのか、ぜひ参考にしてください。
サイボウズ株式会社は、過去に離職率が28%に達する危機を経験しました。その後、「チームワークあふれる社会を創る」という理念のもと、7Sにおける「System(システム)」を大幅に改革しました。
| 改革の目的・テーマ | ・多様な人材が活躍できる基盤の構築 ・深刻な離職率の改善 |
| 改革の概要 | ・働く時間や場所、副業の有無などを社員一人ひとりが選べる「100人100通りの働き方」(選択型人事制度)の実現 ・グループウェアを活用した徹底的な情報共有と透明化 |
個人の事情や価値観に合わせたシステムを構築することで、離職率を3〜5%まで改善させることに成功した事例です。
ITサービス企業のSCSK株式会社では、社員の専門性を高め、継続的なキャリア自律を促すために、7Sにおける「Skills(スキル)」を強化する高度な人材育成制度を導入しています。
| 改革の目的・テーマ | ・社員の専門性向上と自発的な学習意欲の促進 ・継続的なキャリア自律の支援 |
| 改革の概要 | ・社員が保有する技術やビジネススキルを客観的に評価する「専門性認定制度」の構築 ・組織のSkills(スキル)を明確に定義し可視化することで目標設定を容易にする |
個人のスキルを可視化して底上げすることで、結果として組織全体の提供価値の向上へとつなげている事例です。
日本航空株式会社(JAL)は、2010年に戦後最大規模の負債を抱えて経営破綻しました。当時の「社員の意識がバラバラで一体感が欠如している」という課題に対し、7Sにおける「Shared Value(共通の価値観)」を浸透させる改革を行いました。
| 改革の目的・テーマ | ・全社員の意識改革(採算意識・当事者意識の醸成) ・組織の一体感と求心力の創出 |
| 改革の概要 | ・経営再建にあたり、新たな行動指針となる「JALフィロソフィ」を策定 ・手帳の配布や全社的な勉強会を通じた徹底的な理念浸透活動の実施 |
共通の価値観を全社員に浸透させることで意識改革を行い、経営破綻から約3年で史上最高の営業利益を記録し、再上場を果たした組織再生の事例です。

目標達成に向けて組織をマネジメントするためには、戦略から価値観までを体系的に見直す「7S」の活用がおすすめです。また、効率化のためには階層別研修の実施や、タレントマネジメントの推進といった取り組みも欠かせません。
組織課題の解決やマネジメント層のスキルアップでお悩みの方は、アンドアの人材育成・組織開発サービスをご検討ください。弊社は実践的な研修プログラムの提供を通じて、企業の持続的な成長をサポートしています。経営層や人事担当者が中心となり、自社に最適な組織マネジメント体制を構築しましょう。
山梨県出身。山梨でコミュニティカフェを経営後、人材組織開発コンサルティング会社に入社。 スタートアップから大手企業の若手・中堅向けリーダーシップ開発や組織の対話風土改革に尽力した後、新規事業開発部にて事業開発マネジャー、営業マネジャーを兼任。 自社内の事業構造改革から営業戦略・マーケティング戦略まで広く携わり、その知見を人材・組織開発へ転用することを得意としている。 モットーは、「本来の力が発揮できる対話力と環境づくりを引き出す」
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