「1on1で本音が引き出せない」を見直す「組織内対話」の基本

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組織内対話が停滞し、「1on1で部下が話せない」問題に悩むマネージャー必見。心情の言語化や仕事の意味の共有など、組織の成長段階に応じた具体的な対話改善策を紹介。自由に意見を交わせる組織づくりの秘訣を解説します。

組織内対話の重要性と「言えない・聞けない」組織の現状

皆さん、こんな経験はありませんか?

・会議で特定の人だけが話し、他のメンバーからの発言がない
・1on1が、上司からの一方的な評価を聞く場になっている
・部下からの報連相が形骸化し、上司からの指示だけで終わってしまう

これらは、組織内で「言えない・聞けない」文化が形成されつつある典型的な兆候です。

なぜ組織内で自由に話せなくなるのか?

組織が成長するにつれて、往々にして以下のような状況が生まれます。

  1. 初期:【「わからない」状態の多発】判断基準や方向性が不明確になる
  2. 中期:【犯人探し】問題が起きると「誰が悪いのか」を追及する雰囲気になる
  3. 後期:【個人商店化】「自分でやった方が早い」という考えが蔓延する

これらの状況は、時間の経過とともに進行し、最終的には組織全体のエンゲージメント低下につながります。

「言えない・聞けない」組織の3つの進行段階

「言えない・聞けない」組織には、以下3つの進行段階があります。

  1. 初期段階:「わからない」が多発
    • 持論や心情の共有が行われず、判断軸や基準が揃わない
    • 特にメンバー層が自分の意見に自信を持てず、発言者が偏り始める

  2. 中期段階:「犯人探し」が加速
    • 「〜すべき」という思考が強化され、「できていない人・チーム探し」が進む
    • 問題の本質よりも表面的な「打ち手」が優先されてしまう

  3. 後期段階:「個人商店化」が加速
    • 上司の話しすぎとメンバーの抱え込みが発生
    • フィードバックが減少し、「自分だけで仕事をしよう」という思いが強くなる

効果的な組織内対話がもたらすメリット

一方で、活発な組織内対話には多くのメリットがあります。

  • イノベーションの促進:多様な意見の交換が新しいアイデアを生み出す
  • 従業員エンゲージメントの向上:自分の意見が尊重されることで仕事への意欲が高まる
  • 問題解決力の強化:オープンな対話が問題の早期発見と解決につながる

自己診断ツール:あなたの組織の対話レベルをチェック

では、あなたの組織の対話レベルはどの程度でしょうか?以下の簡単な診断ツールで、現状を把握してみましょう。

組織内対話レベルの5段階評価

  1. レベル1:沈黙の組織
  2. レベル2:形式的な対話
  3. レベル3:限定的な対話
  4. レベル4:活発な対話
  5. レベル5:創造的な対話

以下、簡易チェックリストの質問に「はい」「いいえ」で回答し、自組織の対話レベルを把握しましょう。

以下の質問に「はい」「いいえ」で答えてください。

  1. 会議で全員が自由に意見を述べていますか?
  2. 1on1で部下が積極的に自分の考えを話していますか?
  3. 部門を超えた自由な情報交換が行われていますか?
  4. 失敗した経験を共有し、学びとして活用していますか?
  5. 上司と部下が互いにフィードバックを行っていますか?

「はい」の数が0-1個:レベル1-2、2-3個:レベル3、4-5個:レベル4-5と判断できます。

診断結果別の即時アクションプラン

以下は、すぐに実行できるアクションを診断結果のレベル別にまとめたものです。

レベル1-2:

  • 今週の1on1で、部下の興味や関心を聞き出す時間を設ける
  • 会議で全員に必ず1回は発言してもらう機会を作る

レベル3:

  • 部門横断的なプロジェクトチームを立ち上げ、自由な意見交換の場を設ける
  • 「失敗学習会」を開催し、失敗事例とその学びを共有する

レベル4-5:

  • イノベーションタイムを導入し、自由な発想を促進する
  • 組織の成功事例を社内外に発信し、対話文化を更に強化する

アンドアでは、より詳細な診断を使いながら組織内対話の傾向を把握して、自組織に合わせたインパクトのある施策をお届けしています。

アンドア式組織内対話改善メソッド

アンドアでは、長年の経験から独自の組織内対話改善メソッドを確立しています。
その核となるのが「心情・仕組み・意味」の3軸アプローチです。

「心情・仕組み・意味」の3軸アプローチ

  1. 心情:一人ひとりの感情や想いを大切にし、言語化を促進
  2. 仕組み:問題を個人ではなく、組織の仕組みの観点から捉える
  3. 意味:仕事の意味やインパクトを明確にし、モチベーションを高める

このアプローチを組織の成長段階に合わせて適用することで、効果的な対話改善を実現します。

段階別アプローチ

「言えない・聞けない」組織の3つの進行段階別に、効果的なアプローチをご紹介します。

  1. 初期段階:心情の言語化に注力
    • 1on1での「経験」「内省」「持論」「挑戦」に関する問いかけを重視することで、
      わからないことを言語化できるようにサポートする

  2. 中期段階:仕組みへの問いかけを強化
    • 「誰が」ではなく「どこで」、「なぜ」ではなく「何が」という質問の言い換えによって、仕組みへの問いかけを増やし、問題の原因を解決する

  3. 後期段階:仕事の意味の言語化に焦点
    • 個人の感情が乗っかる仕事ややりたいことの言語化と、自組織の貢献対象を明確化する対話によって、一人ひとりの仕事の意味を言語化する

1on1ミーティングを活用した組織内対話の改善策

1on1ミーティングは、組織内対話を改善する最も効果的なツールの一つです。

アンドアでは、以下の「対話の型」を提案しています。

効果的な1on1の「対話の型」とは

  1. 興味:現状の関心や課題を明らかにする
    例:「この時間でどのようなことが明らかになると良いですか?」
  2. 積み上げ:過去の取り組みと成功の姿を明らかにする
    例:「今までに、どのようなことを試してきましたか?」
  3. 改善提案:最も重要な行動とそのリソースを明らかにする
    例:「はじめの一歩として何を行いますか?」
  4. 懸念払拭:期限を握り、不安要素を取り除く
    例:「挙げた行動はいつまでに終えていたいですか?」
  5. まとめ:判断を尊重し、勇気づける
    例:「今回の対話から得られたものは何ですか?」

1on1で心情を引き出す「問いかけ」の技術

心情を引き出して、新しい行動に繋げるためには、経験学習サイクルをもとにした以下のような問いかけ方があります。

  • 経験:「最も印象に残っている仕事の経験は何ですか?」
  • 内省:「その経験から、どのような気づきがありましたか?」
  • 持論:「その経験を通じて、どのような仕事の哲学が生まれましたか?」
  • 挑戦:「その哲学を活かして、今後どのようなことに挑戦したいですか?」

1on1を通じた「仕事の意味」の言語化

仕事の意味を言語化することで、モチベーションとエンゲージメントが高まります。
以下のような問いかけを活用しましょう。

  • 「あなたの仕事は、どのように顧客や社会に貢献していますか?」
  • 「あなたの強みやスキルは、どのように組織の目標達成に寄与していますか?」
  • 「5年後、あなたはどのような価値を組織にもたらしていたいですか?」

これらの問いかけを通じて、個人の仕事と組織の目標を結びつけ、より深い意味を見出すことができます。

組織の成長段階に応じた対話改善戦略

組織の成長段階によって、最適な対話改善戦略は異なります。
アンドアでは、以下の3つの段階に応じたアプローチを提案しています。

初期段階:心情の言語化を促進する

初期段階では、メンバーが自分の意見や感情を表現することに躊躇している状態です。
この段階では、心情の言語化を促進することが重要です。

具体的なアプローチ:

  • 「安全な場」の創出:失敗を恐れずに発言できる雰囲気づくり
  • 「聴く」スキルの強化:マネージャーが積極的に傾聴する姿勢を示す
  • 「承認」の文化醸成:小さな発言や行動も積極的に認め、称賛する

例えば、週1回の「心情共有会」を設け、仕事で感じた喜びや困難を自由に語り合う場を作るのも効果的です。

中期段階:問題の所在を明確にする

中期段階では、問題が個人に帰結されがちです。
この段階では、問題を「仕組み」の観点から捉え直すことが重要です。

例えば以下のようなアプローチがあります。

  • 問題解決の4W思考:問題の「所在(Where)」を明らかにする問題解決思考を身につける
  • システム思考の導入:問題を全体の中で捉える視点を養う
  • 解決志向のディスカッション:批判ではなく、改善案を出し合う文化づくり

例えば、「仕組み改善会議」を定期的に開催し、現状の業務プロセスや組織構造について、全員で改善案を出し合うのも良いでしょう。

後期段階:仕事の意味を言語化する

後期段階では、個人主義的な傾向が強まります。
この段階では、個人の仕事と組織の目標を結びつけ、仕事の意味を再確認することが重要です。

例えば、以下のようなアプローチがあります。

  • パーパス・ワークショップの実施:個人と組織のパーパスを探求する
  • インパクト・ストーリーの共有:自分の仕事が他者や社会に与える影響を語り合う
  • フューチャー・セッションの開催:組織の未来像を全員で描く

例えば、四半期に一度「私たちの仕事の意味を考える日」を設け、各自の仕事が組織や社会にどのような価値をもたらしているかを共有し合うのも効果的です。

自発的な対話を促進するパーソナル・ブランディング

組織内対話を活性化するには、個人が自発的に発信する力も重要です。

そのカギとなるのが「パーソナル・ブランディング」です。

パーソナル・ブランディングの重要性と効果

パーソナル・ブランディングとは、自分の強みや特徴を明確にし、それを周囲に効果的に伝えることです。
これにより、以下のような効果が期待できます。

  • 自己理解の深化:自分の強みや価値観が明確になる
  • 信頼関係の構築:周囲があなたの特徴や貢献を理解しやすくなる
  • 機会の創出:自分に合った役割や プロジェクトが増える

「自分らしさ」を言語化する方法

自分らしさを言語化するには、以下のようなステップが効果的です。

  1. 強みの棚卸し:過去の成功体験から、自分の強みを抽出する
  2. 価値観の明確化:仕事で大切にしていることを書き出す
  3. パッションの探求:心から楽しいと感じる要素を特定する
  4. ユニークネスの発見:他者と比較して自分だけの特徴を見出す

これらを統合し、「私は〇〇な人です」というステートメントにまとめることで、自分らしさが明確になります。

読者Q&A:組織内対話の悩みにアンドアが回答

最後に、読者の皆様からよくいただく質問にお答えします。

Q1: 「上司が話しすぎて、なかなか自分の意見が言えません。どうすればいいでしょうか?」

A1: まずは、上司との1on1の機会を活用しましょう。
「この時間の私の期待を伝えてもいいですか?」と率直に伝えるのも一つの方法です。

また、会議前に自分の意見をメールで送っておくなど、複数のコミュニケーション手段を使うのも効果的です。

Q2: 「チーム内で対立が起きたときの対話の進め方を教えてください。」

A2: 対立時こそ、冷静な対話が重要です。
まず、各自の意見を否定せずに傾聴することから始めましょう。
そして、対立の根本にある懸念や価値観の違いを明らかに、最後に、組織の目標や顧客価値という大きな視点から、Win-Winの解決策を探りましょう。

Q3: 「リモートワーク環境で、チームの一体感を醸成するコツはありますか?」

A3: オンラインでの「朝会」や「夕会」を設け、業務以外の話題も共有する時間を作ることが効果的です。
また、オンライン上で「褒め合い」や「感謝の言葉」を共有する仕組みを作ることで、心理的な距離を縮めることができます。
定期的なオンライン懇親会も、リラックスした対話の場として有効です。

アンドアによる組織内対話改善のワンポイントアドバイス

最後に、明日から実践できるワンポイントアドバイスをお伝えします。

  1. 「質問」の力を活用する:相手の話を遮らず、オープンな質問を投げかけることで、対話を深めることができます。
  2. 「沈黙」を恐れない:沈黙は相手が考えをまとめる大切な時間です。急かさず、ゆっくり待つ姿勢が重要です。
  3. 「承認」を習慣化する:相手の発言や行動に対して、具体的に承認の言葉をかけることで、対話の質が向上します。

組織内対話の改善は、一朝一夕には実現しません。

しかし、小さな一歩から始めることで、必ず変化は生まれます。

ぜひ、今日からできることから始めてみてください。皆様の組織が、活発で創造的な対話に満ちた場になることを心より願っています。

執筆者

堀井 悠

スターバックス、学習塾、リクルートを経歴し、大手・ベンチャーのカルチャーを経験。 人材組織開発コンサルティング企業で、自動車メーカー、食品会社、スタートアップ事業で企画、開発、講師を経験。 独自の理論「腹割り対話でつくる組織変革」を提唱。 モットーは「あした、また、がんばろう」と思えるチームを増やすこと。

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