人的資本経営の事例15選|推進に重要なフレームワークや流れも解説

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人的資本経営の事例を探している方に向けて、本記事では、具体的な企業の取り組みや重要なフレームワークを紹介します。人的資本経営推進の基本的な流れも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

人的資本経営の推進を任されたものの、「何から手をつけるべきなのか」「他社はどのように取り組んでいるのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

人的資本経営は今や投資家からも注目される重要な経営課題であり、自社の課題や状況に合った取り組みが求められます。

本記事では、人的資本経営に取り組む15社の事例を紹介します。推進に役立つフレームワークや実践の流れも解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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人的資本経営とは

人的資本経営とは、企業が有する人材を「資本」として捉える経営手法のことです。

従来の人材管理では人材は「コスト」として扱われ、「いかにして効率的に管理するか」といった考え方が一般的でした。しかし、近年では人材への投資が企業価値や競争力の向上に寄与すると考えられています。

人的資本経営が注目されるようになった背景には、労働人口の減少や終身雇用の崩壊など、ビジネス環境の急速な変化があります。現在は採用した人材をしっかりと定着させて活用できるかどうかが、企業の競争力を左右するようになりました。

2023年3月期の決算以降、上場企業を対象に人的資本情報の開示が義務化されています。義務化により、人的資本の取り組みは投資家からも注目される重要な指標になったと考えられます。

人的資本情報の開示について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

内部リンク:3月KW「人的資本経営 開示」

人的資本経営を推進した企業の取り組み事例15選

人的資本経営の推進を考える際は、先進的な企業の取り組みを参考にすることをおすすめします。ここでは、他社の取り組みとして15の事例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。

事例1.伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社は、繊維や食料、エネルギーなど幅広い分野を手がける大手総合商社です。同社は「厳しくとも働き甲斐のある会社」を人材戦略の根幹とし、2010年より独自の「働き方改革」を推進しています。

朝型勤務制度の導入や企業内託児所の設置に加えて、組織横断で社員がプロジェクトに参加できるプラットフォーム「バーチャルオフィス」を導入しました。

毎年エンゲージメントサーベイを実施してPDCAサイクルを回す継続的な取り組みにより、2024年度には労働生産性が2010年度の5.7倍になりました。

参照:人材戦略|伊藤忠商事株式会社

事例2.旭化成株式会社

旭化成株式会社は、マテリアル・住宅・ヘルスケアの3領域を中心に展開している大手総合化学メーカーです。

同社は「人は財産、すべては『人』から」の理念のもとに、「終身成長」と「共創力」を人財戦略の2本柱に位置づけています。具体的には、1万以上のコンテンツを備えた学習プラットフォーム「CLAP」を展開し、主体的な学びを促す環境を整備しました。

また、2021年には「DX Vision 2030」を策定し、デジタル人財育成にも注力しています。2025年3月末には、目標としていた2500名を上回る、3,157名のデジタルプロフェッショナル人財の育成を実現しました。

参照:人財|旭化成株式会社

事例3.SOMPOホールディングス株式会社

SOMPOホールディングス株式会社は、損害保険・生命保険・介護など幅広い事業を展開する持株会社です。

社員一人ひとりが自分のミッションと向き合う「MYミッション研修プログラム」を展開するとともに、ジョブ型人事制度を導入してキャリア自律を後押ししています。

また、働き方改革の進捗を管理する「生産性KPI体系」を構築し、従業員エンゲージメントをグループ全体のKPIとして設定して継続的な改善につなげています。

参照:人的資本|SOMPOホールディングス株式会社

事例4.アステラス製薬株式会社

アステラス製薬株式会社は、がん・泌尿器・眼科など多様な疾患領域で革新的な治療薬を開発・提供しているグローバル製薬企業です。

同社は以下の3つを組織健全性目標に掲げ、人材戦略を推進しています。

  • 果敢なチャレンジで大きな成果を追求
  • 人材とリーダーシップの活躍
  • Astellas Oneで高みを目指す

年1回のグローバルエンゲージメントサーベイで課題を特定し、マネジャーのリーダーシップ能力開発といった改善アクションを継続的に実施しています。

参照:統合報告書2025|アステラス製薬株式会社

事例5.オムロン株式会社

オムロン株式会社は、制御機器・ヘルスケア・社会システムなど多岐にわたる事業を展開するオートメーションの世界的企業です。

同社は独自指標である「人的創造性」を人材戦略の成果指標に設定し、人材投資と価値創出の好循環を追求しています。2012年からは企業理念の実践事例を全社で共有するイベントを継続開催し、2023年の人的資本調査で「人的資本経営品質ゴールド」を初受賞しました。

参照:人的資本経営とTOGA|オムロン株式会社

参照:オムロン、『人的資本調査2023』において、『人的資本経営品質ゴールド』を初受賞|オムロン株式会社

事例6.株式会社荏原製作所

株式会社荏原製作所は、ポンプ・圧縮機・半導体製造装置など幅広い流体機械を手がける総合機械メーカーです。

同社は最高人事責任者の方針として「世界中のどこから入社しても、グローバルに挑戦し続ける多様・多能な人材が活躍できる仕組みを整えること」を掲げています。具体的には、6つの重点KPIと14のプロセスKPIを設定して月次でモニタリングしています。

取り組みが評価され、2025年には人的資本を意識した経営に取り組む国内上位100社で構成される「JPX 日経インデックス人的資本100」に選定されました。

参照:人事・総務部門リーダー交流座談会|株式会社荏原製作所

参照:産業機械業界の「人的資本経営」に向けた取り組み|株式会社荏原製作所

事例7.花王株式会社

花王株式会社は、スキンケア・ヘアケア・洗剤など生活用品を幅広く展開する大手消費財メーカーです。同社は中期経営計画「K27」の人材戦略として、以下の4つを重要テーマに掲げています。

  • 意欲ある人財をとがらせる
  • 脱マトリックス型組織運営
  • 挑戦・成果重視の環境創り
  • 公平な機会の提供

社員教育投資は2024年時点で2020年比の2.02倍に拡大し、DX人材も同10倍に増加しました。社員エンゲージメントサーベイや挑戦志向型人財比率などの指標を設定し、2027年度の目標達成に向けた取り組みを継続しています。

参照:人材開発|花王株式会社

事例8.キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社は、酒類・飲料・ヘルスサイエンス・医療領域など多様な事業を展開する食品・飲料メーカーです。同社は「人財が育ち、人財で勝つ会社」を目指し、以下の4つのファクターで貢献する「P&Cストーリー」を策定しています。

  • Well-Being
  • Growth
  • DE&I
  • KABEGOE

ヘルスサイエンス事業の強化に向けて、2022年4月から2025年3月までに専門人財38名をキャリア採用しました。また、ファンケルとの人材交流も約30名規模に拡大し、グループシナジーの創出に取り組んでいます。

参照:人財力(人的資本)|キリンホールディングス株式会社

事例9.KDDI株式会社

KDDI株式会社は、通信事業を軸としてさまざまなサービスを展開している大手通信会社です。

同社は中期経営計画における重要課題として「人財ファースト企業への変革」を掲げ、2020年から「KDDI版ジョブ型人事制度」を導入しています。2024年にはAIを活用した評価フィードバック支援や管理職向けHRダッシュボードを導入するなど、積極的に人的資本経営を推進してきました。

こうした取り組みが評価され、第10回HRテクノロジー大賞で「人的資本経営部門優秀賞」を獲得しています。

参照:第10回HRテクノロジー大賞にて「人的資本経営部門優秀賞」を受賞|KDDI株式会社

事例10.ソニーグループ株式会社

ソニーグループ株式会社は、エレクトロニクス・ゲーム・音楽・映画など多様な事業をグローバルに展開する総合エンタテインメント企業です。

同社では、以下の人事戦略のフレームワークのもと、1966年に他社に先駆けて社内募集制度を導入しています。

  • 個を求む
  • 個を伸ばす
  • 個を活かす

ほかにも、社内FA制度や社内兼業を促す「キャリアプラス」制度など、社員が主体的にキャリアを選び取れる仕組みを整備しています。

参照:サステナビリティレポート 2023 人材|ソニーグループ株式会社

事例11.株式会社丸井グループ

株式会社丸井グループは、小売とフィンテックを両輪として事業を展開している持ち株会社です。

同社では人的資本への投資額を2026年3月期に120億円にまで拡大し、人件費に占める投資の割合を22%から35%まで高める方針を、中期経営計画で掲げています。また、無形資産比率を現状の44%から2030年を目途に80%まで高め、企業価値向上につなげる方針を明示しています。

参照:人的資本投資|株式会社丸井グループ

事例12.アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループホールディングス株式会社は、ビール・飲料を中心にグローバル事業を展開している総合酒類・飲料メーカーです。同社は「人こそが持続的な価値創造の源泉である」の考えのもと、以下4つを人材戦略の柱にしています。

  • セーフティ&ウエルビーイング
  • ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
  • 学習する組織
  • コラボレーション

グローバルでのグレード標準化を進めて地域間の報酬の公平性を確保し、地域を超えた人材移動の機会の拡大にも注力しています。多様な背景を持つ経営陣を登用し、人材発掘・育成の多様化も推進している事例です。

参照:戦略説明会(人的資本&サステナビリティ)|アサヒグループホールディングス株式会社

参照:ASAHI GROUP People & Culture Report 2024|アサヒグループホールディングス株式会社

事例13.サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社は、グループウェアの開発・提供を中心に事業を展開しているソフトウェア企業です。「チームワークあふれる社会を作る」をパーパスとして掲げ、以下の4テーマを軸にした人的資本経営を推進しています。

  • チームワークの向上
  • メンバーの自主自律
  • チームとメンバーの多様なマッチング
  • 安心・安全な関係性と環境

年間12万円までスキル習得費用を補助する「Self-learning Program」や他部署を体験できる「大人の体験入部」など、社員の自主自律を促す施策に取り組んでいる事例です。

参照:サイボウズの人的資本経営〜チームワークあふれる会社を創る〜|サイボウズ株式会社

事例14.株式会社ニッスイ

株式会社ニッスイは、水産・食品・ファインケミカルなどの事業を国内外で展開している総合水産・食品企業です。

同社は中期経営計画「GOOD FOODS Recipe2」において、「人的資本経営とブランディングの推進」を基本戦略の一つに位置づけています。国内外の人財交流を積極的に活用し、グローバルで競争力のある人財育成を推進中です。

また、従業員エンゲージメントスコアの20%向上と女性幹部職比率20%を、KPIとして掲げています。

参照:ニッスイグループ 統合報告書2025|株式会社ニッスイ

事例15.株式会社ポーラ

株式会社ポーラは、スキンケアを中心とした化粧品の研究開発・製造・販売を手がける美容企業です。同社は社員を「VALUE CREATOR」と表現し、「知る→描く→学ぶ→発揮する」の4フェーズで社員のキャリア自律を支援しています。

例えば、目標評価制度の25%を「中長期変革目標」として設定し、一人ひとりの変革アクションを実践に結びつける仕組みを整えています。こうした取り組みにより、「キャリアに主体的なマインドが備わっている」と感じる社員が1年間で14.1%増加しました。

参照:キャリアオーナーシップ経営 AWARD 2024「人事/HRの変革部門」にてポーラが最優秀賞を受賞|株式会社ポーラ

人的資本経営で重要なフレームワーク

人的資本経営の推進にあたっては、経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」で示されたフレームワーク「3P・5Fモデル」が参考になります。ここでは、実践においてとくに重要な2つのフレームワークを紹介します。

人的資本経営における3つの視点(3P)

「3つの視点(3P)」とは、人的資本経営を推進する際に意識すべき以下の3つの視点のことです。

視点内容
経営戦略と人材戦略の連動経営戦略の実現に向けてどのような人材が必要か、人材戦略と紐づけて思考する視点
「As is-To be ギャップ」の定量把握現状と理想の姿のギャップを数値化し、解決すべき課題を明確にする視点
企業文化への定着人材戦略がどれだけ企業文化に定着しているのか評価する視点

上記の3Pは独立したものではなく、相互に連携させながら実践する必要があります。経営戦略と人材戦略を連動させた上でギャップを把握し、継続的な改善を通じて企業文化として定着させていく流れが重要です。

人的資本経営における5つの共通要素(5F)

5つの共通要素(5F)とは、人的資本経営を実践する上で企業が共通して取り組むべき、以下の5つの要素のことです。

要素内容
動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用経営戦略の実現に必要な人材の質・量を見極め、配置を継続的に最適化していく
知・経験のダイバーシティ&インクルージョン多様な知識・経験・価値観を持つ人材を受け入れ、各社員が能力を発揮できる環境を整える
リスキル・学び直し急速に変化するビジネス環境に対応するため、社員が新たなスキルや知識を習得する機会を提供する
従業員エンゲージメントの向上社員が仕事や組織に対して主体的に関わり、高いモチベーションで働ける環境を整える
フレキシブルな働き方の推進働く時間・場所や雇用形態などの柔軟性を高め、多様な働き方を実現する

上記5つの要素は、3つの視点を実現するための実践領域になります。自社の経営戦略や課題に基づき、バランス良く取り組んでいきましょう。

人的資本経営推進の基本的な流れ

人的資本経営を推進していくには、以下のような流れで取り組むことが大切です。

ステップ内容
1.経営戦略と人材戦略を連動させて理想の姿を設定する・自社の経営目標を実現するために必要な人材像や組織の在り方を明確にする
・理想と現実のギャップを認識する
2.重点施策を立案しKPIを設定する理想の姿に近づくために達成すべき施策を考案し、数値で測定可能な中間指標を設定する
3.モニタリングと改善を継続する施策の効果を検証し、改善を繰り返していく

人的資本経営の指標やKPIの設定については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:3月作成KW「人的資本経営 指標」

まとめ

人的資本経営は多くの企業にとって重要な経営課題となっており、各社がさまざまな取り組みを展開しています。先進的な企業の事例を参考に、自社の課題解決や理想の実現にとって最適な取り組みを検討しましょう。

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対話の傾向診断KIK²AKE(きっかけ)

執筆者

松本 悠幹

山梨県出身。山梨でコミュニティカフェを経営後、人材組織開発コンサルティング会社に入社。 スタートアップから大手企業の若手・中堅向けリーダーシップ開発や組織の対話風土改革に尽力した後、新規事業開発部にて事業開発マネジャー、営業マネジャーを兼任。 自社内の事業構造改革から営業戦略・マーケティング戦略まで広く携わり、その知見を人材・組織開発へ転用することを得意としている。 モットーは、「本来の力が発揮できる対話力と環境づくりを引き出す」

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