人的資本経営の情報開示について解説!義務化はいつから?項目は?

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人的資本経営における開示について情報収集している方に向けて、本記事では、情報開示義務化の概要や開示が推奨される分野・項目を紹介します。情報開示のポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

「人的資本の情報開示が大切だと聞いたが、具体的にどう対応すればよいのかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、企業の人事部・経営企画部の担当者に向けて、人的資本情報開示の概要や義務化の内容、開示がおすすめされる7分野19項目などを紹介します。効果的な開示のポイントについても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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人的資本経営の情報開示とは

人的資本経営の情報開示とは、社員が持つ知識・スキル・経験などの「人的資本」の状況を、企業が外部へ公表する取り組みです。開示を通じて企業の透明性が向上し、社外のステークホルダーから中長期的な信頼を獲得しやすくなります。

なお、人的資本の開示についてはISO(国際標準化機構)が策定した「ISO30414」にガイドラインが定められており、投資家が企業価値を判断する上でも欠かせない情報として位置づけられています。

人的資本の情報開示が求められている背景

人的資本の情報開示が企業経営の重要課題として浮上した背景には、欧米の動向や投資家のニーズの変化など複数の要因があります。以下で詳しい背景を解説するので、ぜひ参考にしてください。

欧米における人的資本の情報開示の流れ

欧米諸国では、日本よりも先に人的資本の情報開示の制度化が進んでいます。

時期概要
2014年・EUが「非財務情報開示指令(NFRD)」を採択
・従業員500人以上の大企業に対して人材に関する非財務情報の開示を義務化
2018年ISOが人的資本の報告に関する国際規格「ISO30414」を発行
2020年・米国SEC(証券取引委員会)が「レギュレーションS-K」を改正
・上場企業に対して人的資本に関する情報開示を義務化
2022年・EUが「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」を採択
・開示対象企業を拡大(2024年から段階的に適用)
2023年CSRDに基づく「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」を採択

上記の流れの中、近年では日本国内でも情報開示が進められています。

ESG投資への関心の高まり

ESG投資への関心の高まりも、人的資本の情報開示への注目が急速に高まっている理由の一つです。ESGとは以下の頭文字で作られた造語であり、企業が持続的な成長を続けるために必要とされています。

  • Environment(環境)
  • Social(社会)
  • Governance(ガバナンス)

ESG投資とは、財政面だけでなく社会問題や環境問題への対応も含めて企業を評価する投資手法です。ESG投資の拡大に伴い、投資家が企業の人材戦略や労働環境を重視するようになったことで、人的資本に関する情報が注目されるようになりました。

企業が持つ無形資産割合の上昇

人的資本の情報開示が注目されるようになった背景には、企業が持つ無形資産割合の上昇もあります。

無形資産とは、企業が持つブランドやノウハウ、特許などの「形のない資産」のことです。

以下の通り、S&P500を構成するアメリカの主要企業の市場価値に占める無形資産(intangible Assets)の割合は、近年90%程度にまで高まっています。

有形資産(Tangible Assets)無形資産(Intangible Assets)
197583%17%
198568%32%
199532%68%
200520%80%
201516%84%
20209%91%
20258%92%

参照:Ocean Tomo Releases 2025 Intangible Asset Market Value Study Results|Ocean Tomo

人的資本も無形資産に含まれており、注目度が高まっています。

人的資本の情報開示の義務化について

日本国内でも、人的資本の情報開示が義務化されました。ここでは、義務化の内容と対象企業について解説します。

有価証券報告書への人的資本情報開示の義務化

2023年3月期決算より、有価証券報告書において人的資本に関する情報の開示が義務化されています。対象企業は「人材育成方針」と「社内環境整備方針」の開示とともに、以下のような具体的な指標の開示・記載を求められるようになりました。

  • 女性管理職比率
  • 男性の育休取得率
  • 男女間賃金格差

義務化の背景には、人的資本の考え方を形式的なものに留めず、投資家へわかりやすく情報を開示する目的があります。

開示義務化の対象企業

人的資本の情報開示義務化の対象は、金融商品取引法第24条に基づいて有価証券報告書の提出が義務付けられている、約4,000社の大手企業です。適用開始は2023年3月期決算からであり、すべての上場企業が含まれます。

現時点では中小企業への義務化はされていませんが、今後は規模を問わず開示の必要性が高まると考えられます。

人的資本の開示に関する国内外の主な動向

人的資本の開示をめぐっては、国際的なガイドラインの整備と並行して、日本国内でも制度化に向けた動きがとられています。ここでは、2018年から2022年にかけた主な動向を時系列で解説します。

ISO30414(国際的ガイドライン)の発行|2018年12月

2018年12月には、ISO(国際標準化機構)が「ISO30414」を発行しました。ISO30414は人的資本の情報開示のための国際的なガイドラインであり、企業が投資家やステークホルダーに透明性をアピールする上で重要な指針になっています。

11の項目と58の測定指標があり、各国で規定されている審査を受けることで「ISO30414認証」の取得・公表が可能です。

人材版伊藤レポートの発表|2020年9月

2020年9月には、経済産業省が「人材版伊藤レポート」を発表しました。人材版伊藤レポートの正式名称は、「人材競争力強化のための戦略的人材マネジメント実現に向けて」です。

人材をコストではなく資本として捉え、人的資本への投資強化と積極的な情報開示を企業に求める内容になっています。人材版伊藤レポートの発表により、国内企業の人的資本経営への注目度が高まりました。

非財務情報の開示指針研究会の設立|2021年6月

2021年6月には、金融庁が「非財務情報の開示指針研究会」を設立しました。非財務情報とは、財務諸表には表れない人的資本や環境問題・社会問題への取り組みなど、企業価値に影響を与える情報のことです。

本研究会の設立によって非財務情報の開示の在り方について本格的な議論が始まり、その後の人的資本開示の義務化に向けた制度整備の基盤になりました。

非財務情報可視化研究会の設立|2022年2月

2022年2月には、内閣官房が「非財務情報可視化研究会」を設立しました。人的資本をはじめとする企業の非財務情報を外部に公開する情報として可視化し、株主との意思疎通を深めることを目的としています。

本研究会において非財務情報の評価方法が議論され、続く「人的資本可視化指針」の公表につながっています。

「人的資本可視化指針」の公表|2022年8月

2022年8月には、内閣官房が「人的資本可視化指針」を公表しました。非財務情報可視化研究会での議論を経てまとめられたものであり、企業が人的資本情報を開示する際の考え方や方法を示している指針です。

本指針では、開示にあたって参考となる7つの分野・19の項目が示されています。7分野19項目の開示は義務ではなく任意ですが、企業が自社特有の情報をアピールするために重要であると位置づけられています。

人的資本の情報開示が推奨されている7分野19項目

「人的資本可視化指針」では、開示が推奨される情報として7つの分野・19の項目が定められています。以下で各分野の内容を詳しく解説するので、自社の開示内容を検討する際の参考にしてください。

1.人材育成

人材育成は、社員のスキルや能力を高めるための取り組みに関する分野であり、以下の項目の開示が推奨されています。

  • リーダーシップ
  • 育成
  • スキル

例えば、「研修に費やした総時間・総費用」「管理職一人あたりの部下の人数」「リスキリングへの取り組み」などが開示事項として挙げられます。人材育成への投資状況を開示すれば、企業の持続的な成長力のアピールが可能です。

2.エンゲージメント

エンゲージメントは、従業員が企業に対して持っている愛着や業務へのモチベーションの高さに関する分野です。例えば、「従業員のエンゲージメントスコア」「従業員満足度調査の結果」「自発的離職率」などが開示項目として挙げられます。

エンゲージメントの高さは企業の業績や生産性に大きく影響するため、開示によって自社の組織力や職場環境の充実度を対外的にアピールできます。

3.流動性

流動性は、企業における人材の採用・離職や定着、後継者育成などに関する分野です。具体的には、以下をはじめとする項目の開示が推奨されています。

  • 採用
  • 維持
  • サクセッション

例えば、「離職率」「定着率」「採用コスト」「後継者有効率・カバー率」などが開示項目として考えられます。流動性に関する情報を開示すれば、ステークホルダーに企業の人材確保に関する能力や組織の安定性などを示すことが可能です。

4.ダイバーシティ

ダイバーシティは、企業の人材の性別や年齢、国籍などの多様性に関する分野であり、以下の項目の開示が推奨されています。

  • ダイバーシティ
  • 育児休暇
  • 育児・介護休暇

例えば、「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「管理職における外国人比率」「男女間賃金格差」などが開示項目として挙げられます。ダイバーシティに関する情報を開示すれば、企業の職場環境に対する取り組みを社外にアピール可能です。

5.健康・安全

健康・安全は、従業員の心身の健康や職場における安全管理に関する分野であり、以下の項目の開示が推奨されています。

  • 精神的健康
  • 身体的健康
  • 安全

例えば、「労働災害発生率」「傷病による休業率」「ストレスチェックの受検率」などが主な開示項目です。健康・安全に関する情報を開示すれば、投資家やステークホルダーに従業員を大切にする企業姿勢をアピールできます。

6.労働慣行

労働慣行は、労働環境や雇用条件、労使関係など企業における働き方全般に関する分野です。主に、以下のような項目の開示が推奨されます。

  • 労働慣行
  • 児童労働/強制労働
  • 賃金の公平性
  • 福利厚生
  • 組合との関係

具体的な開示項目は、「平均労働時間」「時間外労働時間」「正規・非正規雇用比率」「福利厚生の種類・内容と利用率」などです。労働慣行に関する情報を開示すれば、公正で持続可能な雇用環境を整えている企業であることを対外的に訴求できます。

7.コンプライアンス・倫理

コンプライアンス・倫理は、法令遵守や企業倫理に関する取り組みに関する分野であり、「法令遵守」の項目のみ開示が推奨されています。

主な開示項目は、「法令違反件数」「ハラスメントの相談・解決件数」「コンプライアンス研修の実施率」「懲戒処分の件数」などです。コンプライアンス・倫理に関する情報を開示すれば、投資家やステークホルダーに健全な企業統治への取り組みを伝えられます。

人的資本の情報開示における重要ポイント

人的資本の情報開示を実施する際には、ポイントを押さえた行動が大切です。以下で開示において把握しておくべき重要な点を紹介するので、ぜひ参考にしてください。

課題解決に向けたストーリーを作り上げる

人的資本の情報開示においては、課題解決に向けたストーリーを作り上げることが大切です。事実や数字をただ記していくだけでは、投資家やステークホルダーへの訴求にはつながりません。課題に対して打ち出した施策の内容やその影響・変化について、ストーリー性を意識して記載してください。

社内の具体的な課題の事例を取り上げ、課題発見から分析、施策の立案・実施、効果測定に至るまでの流れを、未来に向けた取り組みとして報告しましょう。

独自性のある情報を開示する

独自性のある情報を開示することも、自社のアピールにつながります。指針に従って事実をただ羅列するだけでは、ほかの企業との差別化が図れません。自社の戦略を振り返り、独自性の強い施策がないか検討してみてください。

例えば、自社ならではの人材育成プログラムや労働時間短縮に向けた取り組みなど、他社とは異なる強みがあれば積極的に開示しましょう。

取り組み内容は数値や事例などで具体的に示す

人的資本の情報開示では、取り組み内容を数値や事例などを用いて具体的に示す意識が重要です。「人材育成に力を入れている」「ダイバーシティを推進している」などと抽象的に表現していては、自社の取り組みの実態が伝わりません。

例えば、「研修の実施時間や受講者数」「女性管理職の比率」など、定量的なデータを積極的に示せば、成果や進捗を客観的に伝えられます。数字だけでは伝わりにくい取り組みについては、具体的な施策事例を添えて、意図や背景を補足するとよいでしょう。

人的資本経営の事例について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

内部リンク:3月KW「人的資本経営 事例」

まとめ

人的資本の情報開示は、企業の透明性を高め、投資家やステークホルダーからの信頼獲得につながる重要な取り組みです。

義務化された項目への対応にとどまらず、自社ならではのストーリーや独自性のある情報を具体的に示すことが、他社との差別化につながります。本記事で紹介した内容も参考にしながら、情報開示への対応を進めましょう。

人的資本経営のさらなる実践事例については、以下の資料もあわせてご確認ください。

チーム像のリ・デザイン

執筆者

松本 悠幹

山梨県出身。山梨でコミュニティカフェを経営後、人材組織開発コンサルティング会社に入社。 スタートアップから大手企業の若手・中堅向けリーダーシップ開発や組織の対話風土改革に尽力した後、新規事業開発部にて事業開発マネジャー、営業マネジャーを兼任。 自社内の事業構造改革から営業戦略・マーケティング戦略まで広く携わり、その知見を人材・組織開発へ転用することを得意としている。 モットーは、「本来の力が発揮できる対話力と環境づくりを引き出す」

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