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「”あなたのために”と言えば伝わる」
「フィードバックは”伝え方”が9割」
多くの企業がこうしたノウハウを学び、コミュニケーション研修や1on1制度を導入しています。
しかし現場では「何度言っても若手に響かない」「厳しく言えば萎縮され、やさしく言えば甘く見られる」という声が絶えません。
これらは”伝え方”の問題ではなく、そもそも「話ができる関係性」が構築されていないことが原因です。
どんなに言葉を選んでも、その言葉が届く土壌がなければ意味がありません。
本コラムでは、この問題を「社会構成主義」という新しい視点から読み解き、OJT制度が”関係性の土壌”を育てる鍵になることをご提案します。
「私たちが”現実”と感じていることの多くは、他者との関係や対話を通じて作られている」という考え方を社会構成主義と呼ばれています。
たとえば「この部下は主体性がない」と感じても、それは部下個人の性質ではなく、主体性が発揮されにくい関係性がそこにあるだけかもしれません。
この視点に立つと「伝えても伝わらない」のは、相手の理解力の問題ではなく、”その関係性において伝わる構造が育っていない”という見方ができます。つまり、問題は個人ではなく「関係性」にあるのです。
従来のフィードバックは「正解を教える」「評価を伝える」という一方的なものでした。
しかし社会構成主義の視点では、フィードバックは「意味を共につくるプロセス」と捉えることができます。
重要なのは、フィードバックを一回限りの「評価の伝達」ではなく、継続的な「対話のプロセス」として捉え直すことです。
どれだけ丁寧な言葉を使っても、関係性が整っていなければフィードバックは届きません。
- 信頼関係があれば、厳しい言葉も「期待されている」と受け止められる
- 関係性が浅ければ、やわらかい言葉でも「責められている」と感じる
ある企業では、同じ内容のフィードバックでも、直属の上司からは「評価されている」と防衛的に受け止められ、先輩社員からは「助言してくれている」と前向きに受け止められる傾向がありました。
つまり「何を言うか」より「誰との間で言われるか」が重要になってきています。
「関係性のデザイン」とは、誰と誰が、どのように関わるかを意図的に設計することです。
1. 対話の目的を最初に握る
たとえば、1on1の冒頭で「今日は〇〇さんの成長のために話をしたい」と伝えるだけで、部下の受け止め方は大きく変わります。
「評価面談」ではなく「成長支援の時間」だと分かれば、部下も本音を話しやすくなります。
2. 雑談から始める習慣をつくる
週に1回、15分だけ「仕事以外の話」をする時間を設けてみましょう。趣味の話、週末の過ごし方、最近読んだ本など。
こうした雑談の積み重ねが、いざという時の率直なフィードバックを可能にします。
実際、雑談が多い職場ほど、厳しいフィードバックも建設的に受け止められる傾向があります。
3. 先輩社員を「橋渡し役」にする
上司と部下の間に、評価に関わらない先輩社員を入れることで、対話の質が変わります。
先輩が「上司はこういう意図で言っているんだよ」「君の頑張りは上司も認めているよ」と通訳することで、誤解や緊張が解けていきます。
4. 一緒に汗をかく機会をつくる
新規プロジェクトの立ち上げ、社内イベントの準備、顧客対応の同行など、上司と部下が「同じ側」に立って取り組む経験は、普段の上下関係を超えた信頼を生みます。
「あの時一緒に頑張った」という共通体験があれば、その後のフィードバックも素直に受け入れられるようになります。
こうした意図的な設計によって、自然に対話が生まれる土壌が育まれます。
上司と若手が直接向き合う構造では、若手は「評価される」と身構え、管理職は「響かない」と諦めがちです。
この緊張を和らげるには、“関係性の間に立つ存在”が必要です。
OJTトレーナーは単なる「業務を教える人」だけではなく、以下のような役割を担います。
- 若手の不安や意図を汲み取り、上司に橋渡しする
- 上司の期待を、若手に分かりやすく翻訳する
- 日常の成長を言語化し、職場で共有する
このような役割を担えば、OJT制度そのものが”対話と信頼を育てる土壌”に変わります。
フィードバックが機能しない問題は、個人のスキル不足ではなく、関係性の構造的な問題です。
私たちが注目すべきは、
「もっと伝え方を学ぼう」でもなく
「もっと受け止める力を養おう」でもなく
「もっと、関係の育ち方を設計しよう」という発想です
その第一歩として、OJT制度の再定義は最も着手しやすく、本質的な取り組みです。
山梨県出身。山梨でコミュニティカフェを経営後、人材組織開発コンサルティング会社に入社。 スタートアップから大手企業の若手・中堅向けリーダーシップ開発や組織の対話風土改革に尽力した後、新規事業開発部にて事業開発マネジャー、営業マネジャーを兼任。 自社内の事業構造改革から営業戦略・マーケティング戦略まで広く携わり、その知見を人材・組織開発へ転用することを得意としている。 モットーは、「本来の力が発揮できる対話力と環境づくりを引き出す」
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