「成果を出さないと言いたいことも言えない?」組織の”言えない文化”を生む行き過ぎた結果主義を見直す

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「成果を出してから言おうね」と言われたことありませんか?結果重視の組織文化が生む「言えない環境」の課題と、対話型リーダーシップによる解決策を詳しく解説します。

「まだ成果が出てないのに何を語ってるの?」
「結果を出してから言おうね」
「実績がない人の意見は説得力がない」

このような言葉を聞いたり、実際に言われたりして、冷たさや違和感を抱いたことはないでしょうか。
一見合理的に聞こえるこれらの言葉は、組織内の対話を阻害し、長期的な成長を妨げる要因となっている可能性があります。

今回は、結果主義的な評価が組織のコミュニケーションに与える影響と、対話型リーダーシップの観点から、より建設的な組織文化を築くための方法について考えていきます。

「成果がないから言ってはいけない」組織文化の実態

結果主義が生む「言えない空気」

多くの組織では、成果や結果を重視する文化が強く存在しています。
「結果がすべて」「数字で語れ」といった価値観は、確かに組織の目標達成には重要な要素です。

しかし、この価値観が過度に浸透すると、「成果を出していない人は発言してはいけない」という暗黙のルールが生まれることがあります。

この文化の下では、新しいアイデアや改善提案があっても、「まだ実績がないから」という理由で声を上げることを躊躇してしまいます。
特に若手社員や新しいプロジェクトに取り組むメンバーは、発言の機会を奪われがちです。

結果偏重文化が個人とチームに与える影響

結果だけを重視する文化は、個人レベルでは以下のような影響をもたらします。

個人への影響

  • 自己表現への不安や恐れが増大
  • 創造性や革新性の抑制
  • モチベーションの低下とエンゲージメントの悪化

こういった影響がチーム全体に広がることによって、ものが言えないチームとなり、全体の生産性を下げることになります。例えば、以下のような状態にあなたのチームは陥っていないでしょうか。

チームへの影響

  • 多様な視点の欠如
  • 問題の早期発見機会の喪失
  • チーム全体の学習能力の低下
言いたいことを言えない会議

なぜ結果主義的評価が対話を阻害するのか

「証明」ありきのコミュニケーションが生む弊害

「成果を出してから言え」という文化では、すべてのコミュニケーションが「証明」を前提とします。
しかし、対話の本質は証明ではなく、相互理解と共創にあります。

証明ありきのコミュニケーションは、以下のような問題を生じさせます。

  • 防御的な姿勢:メンバーは批判されることを恐れ、安全な発言しかしなくなる
  • 表面的な議論:本質的な課題や根本的な問題提起が避けられる
  • イノベーションの阻害:新しいアイデアの多くは、まだ成果として証明されていないものばかり

心理的安全性を損なう「結果でしか認められない」文化

心理的安全性の研究で知られるエイミー・エドモンドソン教授は、チームの学習と成長には「失敗を恐れずに発言できる環境」が不可欠だと述べています。

「結果でしか認められない」文化は、失敗を過度に怖がり、成功のみに焦点が当たることで、心理的安全性を損ないます。その結果、メンバーは上司に従うふりをして、失敗を隠し、相談や報告を控えるようになります。

イノベーションを阻む「失敗への恐れ」

失敗を恐れてしまうということは、イノベーションの可能性が消失することを意味します。
しかし、「成果を出してから言え」という文化では、失敗の可能性があるアイデアや提案は最初から排除されてしまいます。

この環境においては、成功することのみに焦点が当てられるため、まだ実証されていない仮説や着想、従来とは異なるアプローチが、そもそも生まれない状況が作られます。

「成果を出した人の意見」=「イノベーションで失敗する可能性が低い」とでもなるのでしょうか。

イノベーションに失敗はつきものであり、これまでの暗黙のルールや環境下では評価されなかった貴重な視点を財産として扱うことが、イノベーションに繋がります。

対話型リーダーシップで変わる組織のコミュニケーション

では、成果創出への視点も確保しながら、相互の主体的な意見を聞き合っていくために、リーダーが取るべき関わり方とは、どういったものでしょうか。

ここでは、リーダーがメンバーの成長と成果の両立を成し得るための観点について考えていきます。
より具体的なリーダーの対話のやり方については、こちらの記事も参考にしてください。

成果ではなく「プロセス」に焦点を当てる意味

対話型リーダーシップでは、成果だけでなく、そこに至るプロセスや思考過程を重視します。
これにより、以下のような変化を生み出すことができます。

プロセス重視がもたらす効果

  • メンバーの思考過程や創意工夫から新しい発見の種が得られる
  • 失敗からの学習が組織の財産となる
  • 多様なアプローチが受け入れられる環境が生まれる

例えば、「なぜそのような考えに至ったのか」「どのような背景があったのか」といった質問を通じて、メンバーの思考プロセスを言語化することができます。

多様な視点を活かす対話の仕組みづくり

対話型リーダーシップを実践するためには、組織として以下のような仕組みづくりが重要です。

1. 定期的な対話の場の設置

  • 成果に関係なく意見を交換できる会議の設定
  • 「失敗事例共有会」のような学習機会の創出

2. 質問型コミュニケーションの推進

  • 「どう思う?」「なぜそう考えるのか?」といった開かれた質問の活用
  • 正解を求めるのではなく、多様な意見を取り入れようとする姿勢

3. 心情の言語化を促す環境

  • メンバーが感じていることを率直に表現できる空気づくり
  • 感情や直感も大切な情報として扱う文化の醸成

明日から実践できる対話型リーダーシップのポイント

「なぜそう思うのか」を大切にする質問

結果だけではなく、思考プロセスに焦点を当てることで、メンバーの思考過程からヒントを得ることができるかもしれません。

効果的な質問例

  • 「その考えに至った背景を教えてもらえますか?」
  • 「他にはどんな選択肢があると思いますか?」

これらの質問は、マネージャーが正解を求めるのではなく、メンバーの思考を深く知ろうとすることを目標としています。

失敗や挫折を成長の機会として捉える環境づくり

失敗を責めるのではなく、学習の機会として活用する文化を築くことが重要です。

環境づくりの具体策

  • 「失敗から学んだこと」を共有する定期的な機会を設ける
  • 「挑戦したこと」自体を評価する制度の導入

このような環境では、メンバーは失敗を恐れずに新しいことにチャレンジできるようになります。

まとめ

「成果を出してから言おうね」という言葉に代表される結果主義的な文化は、一見合理的に見えますが、実際には組織の対話を委縮させ、イノベーションや成長の機会を奪ってしまいます。

対話型リーダーシップを用いて、成果だけでなくプロセスや思考過程を重視し、メンバーが安心して発言できる環境をつくりましょう。

それだけでなく、マネージャーがメンバーの思考過程からイノベーションのヒントを得ようとする姿勢こそ、組織の対話文化を大きく変えることができるでしょう。

アンドアでは、メンバーが納得感を持って行動し続けるリーダーやマネージャーのマインドセットから具体的なスキルアップまで、現状の組織文化とこれからの目指す姿に応じて、情報をお届けしています。

執筆者

松本 瑚子

学生時代から10社以上の企業で働くなかで、何度も"自分が自分でなくなっていく経験"をし、現在の社会システムや働く環境、人と人とのコミュニケーションに違和感を持つ。 現在は産業カウンセラーとして、若手社会人向けのコラム執筆を中心に「働く現場で感じた違和感や気づき」を発信中。

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