「この会社で働けてよかった」を生み出すキャリア自律の新常識

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キャリア自律を促進する「キャリア教育の新常識」

人的資本経営やエンゲージメント向上に重要な繋がりを持つ社員一人ひとりの「キャリア自律」。キャリア自律を促進するために、課題と具体的な施策内容を解説いたします。

なぜ従来の「将来像の言語化」が社員自身に響かなくなっているのか、それは現代社会の環境の変化が大きく起因しています。

現在の20代から30代の若手社員は東日本大震災、新型コロナウイルスによる社会の変化を学生時代に経験しています。

常に今の社会の形は短期間で大きく変化し続けると不確実性を前提に物事を考えるようになってきています。

加えて、社会の変化が加速し、個々の人の価値観や目標も多様化・変化する中で、従来の一本道のキャリア形成や将来像だけでは、現実の複雑さや不確実性に対応できなくなっています。

また、近年SNSの発達などにより、若手中堅社員の言語化力が低下している可能性が示唆されています。 

そのため、今自分の持つリソースや悩みを言語化することができなくなり、将来への不安や会社のあり方に対して漠然とした不安を抱えている傾向があります。

若手中堅社員が、自分の持つリソースを言語化する機会を作り、自ら経験を獲得できる状態にしていくことが一層重要になってきています。 

キャリア自律が進まない理由:中堅社員の現状とは

中堅社員がなぜまだ一般社員だと思ってしまうのでしょうか。

外的要素と内的要素に分けて考えてみましょう。

外的要素①キャリア自律が進まない一階層下の仕事“ゆるすぎて離職”

プレイングマネジャーが増える中、マネジャーが仕事を抱えてしまい、部下の仕事まで巻き取ってしまう現象が起きています。

それによって、部下の仕事にチャレンジングな要素がなくなっていき、成長実感を感じることができずに、離職に至ってしまう「ホワイト離職」の原因になっています。

外的要素②とにかく経験が通用しなくなった

リモートワークが拡大、若手と管理職のコミュニケーションギャップが広がっていく中で、「見て覚えてね」が通用しなくなっています。

いい意味で先輩の仕事を見る場面が減ってきていることによって、OJTを進めていくための経験を踏ませることが難しくなってきています。

内的要素③あきらめへの耐性

諸外国との比較の中で、現在の中堅層は自分で「社会を変えられる」や「周囲を変えられる」という思いが非常に低くなっています。

これまでの経験の中で、「自分にはできない」や「周囲に影響を与えられない」という学習性無力感が非常に強くなっている世代とも言えます。

内的要素④キャリアは誰かが決めるもの

「キャリアを決めるのは誰か」という意識を調査した結果によると、約55%の方が「キャリアは自分ではない誰かが決める」と捉えていることがわかりました。

キャリアへの自律性が非常に低い状態で働いている方々が多くなってきています。

受講している方が、何を問題視しているのか

受講生から現状の悩みや課題を収集していくと、「自分にはやりたいことがない」という課題が見えてきました。

それに対して、ギャラップ社のCEOであるジョンクリフト氏は以下のように言っています。

「社員一人ひとりの強みを活かし、引き出していくという意識が大事だろう。何をして欲しいか、何を期待しているかわからないような指示はダメで、コミュニケーションの質の向上も求められる」

では、どのように強みを活かし、引き出しいくことができるのでしょうか。

そのための重要な考え方が、「成果につながる強みとビジョンを棚卸しする自分自身を経営する発想」です。

キャリア自律のポイントをこちらの記事でまとめております。

キャリア自律を促進する自主性を引き出すアプローチ

キャリア自律を促すためには、キャリアを考えることを阻害している要因を取り除き、「言語化」を促していく必要があります。

何を言語化させていくのか、そのアプローチをご紹介します。

キャリア自律を阻害する要因を取り除く

キャリア研修やキャリア開発の話をする上で、重要になるのは「目指す姿」です。

その目指す姿を明らかにしていくために、「なぜキャリアを考える必要があるのか」ということを最初に考えてもらうことが重要になります。

時代の変化からリーダー像の変化までを理解しながら進めていくことによって、自分がキャリアを考える重要性とキャリアを考えるために言語化していく必要のある観点を考えていく土壌を整えていきます。

キャリア自律を促進するための「リソースの言語化」

自分の意思の解像度を上げ、価値を生み出すフレームワークのバリューチェーン・モデルを使うことで、自分のキャリア資産を可視化することが重要です。

自分自身を「自分株式会社」と捉えることによって、単に抽象度高くキャリアについて考えるのではなく、「価値を生み出す資産」として具体的なリソースを言語化していきます。

これは、自分が会社であり、自らのリソースや能力を最大限に活用し、自己成長やキャリア形成を図るという考え方です。

漠然としたキャリアビジョンを言語化するだけでは、現代の社会において、キャリア自律を促進することはできません。

自分がこれまで積み重ねてきている経験からくる「持論」や培ってきた「人脈」など、自分が持っている「無形資産」を可視化していくことが必要になってきます。

「無形資産」が、自分が価値を発揮するための武器となります。

これからより発揮できる価値を高めていくことを考え、どの無形資産に投資をしていくことが重要なのかを考え、プランニングしていくことで、自律的な学びを促すことができます。

自分の強みや弱みを理解し、それを活かして自らのキャリアを構築し、キャリア・オーナーシップを育んでいきます。

キャリア自律を促進する「リソースの言語化」

自分のキャリアを考える上で重要になる「無形資産」ですが、具体的にどのような観点で言語化を進めれば良いのでしょうか。

私たちが実際に行なっているリソースの言語化を一部ご紹介いたします。

1.習慣を振り返る

まず大事になるのは、現在の自分がどのようなリソースを持っているのか、また蓄積しようとしているのかを直視することです。

そのためには、自分の行動を洗い出すことが必要になります。

例えば、1週間の自分の行動をスケージュールから洗い出し、自分の行動を色分けしながら、どの無形資産を活性化させる活動をしているのかを明確にしていきます。

2.リソースの可視化

日頃の行動が分かった上で、現状の自分がどのようなリソースを持っているのかを可視化していきます。

キャリア開発用に作成した診断や、下の図のような簡易診断を使いながら、自分が現状持っているリソースは何か、強みと弱みを明確にします。

ここで大切なことは、強みや弱みを抽象的な言葉、例えば「責任感がある」「主体性がある」など、にせず、自分の習慣と合わせた具体的な言葉に置き直していくことです。

リソースの言語化を行うことのメリットの一つは、この自分の強み・弱みが漠然としたものではなく、具体的な行動として言語化できる点にあります。

3.今後伸ばすリソースと力を借りるリソースをプランニングする

自分が持っているリソースが明らかになった上で、自分が今後投資していくリソースを定めます。

この際、弱みとなるリソースに関しては、最低限伸ばすことを考えながら、他者の力を借りることを前提に、プランニングを行います。

全てを自分でできる状態になることは確かに理想的な姿ではありますが、現実的な行動プランにはなりません。

大切なことは、自分が最も価値発揮ができる無形資産の形成を行うことです。

そのために、周囲の力を借り、自分の強みにより大きな投資をしていくための行動を考えていくことが必要になります。

4.行動を起こし、経験をもとにした無形資産を構築する

3つのステップをもとに考えられたプランを実際の行動に移していき、周囲との協働やサポートを受けながら、無形資産をより大きくしていきます。

キャリアは実際の行動によって作られていきますので、私たちのサポートも個別コーチングなど、個別化された支援をすることも増えてきています。

実際のセミナーではより詳しくプログラム内容をご紹介しております。
合わせてご覧ください。

まとめ

My Incのアプローチを通して、自己のリソースを自分ごととして実感しながらキャリア資産を可視化することが可能となります。

そのような自分のキャリア資産を自分のものと感じられる心の状態「キャリアオーナーシップ」を身につけることで主体的なキャリア開発の習慣へと動機付けることができます。

キャリア資産が可視化され、もしも「自分という名の会社」の経営者ならという問いかけで自発性を引き出し、自分というキャリアの社長としてキャリア自律を促すことが20代〜30代の若手社員のキャリア開発にとって重要です。

執筆者

堀井 悠

スターバックス、学習塾、リクルートを経歴し、大手・ベンチャーのカルチャーを経験。 人材組織開発コンサルティング企業で、自動車メーカー、食品会社、スタートアップ事業で企画、開発、講師を経験。 独自の理論「腹割り対話でつくる組織変革」を提唱。 モットーは「あした、また、がんばろう」と思えるチームを増やすこと。

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