仕事を“抱え込む”不健康さから抜け出すために――本来の「仕事」を取り戻す視点

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仕事を抱え込んでしまい、プライベートの時間も削られがちなビジネスパーソンや若手社員へ向けて、より効率的でクリエイティブな働き方を実現するためのアプローチをご紹介。会社視点と自分視点の両方から「仕事」を再定義し、タスクを効率よく遂行して頭をクリアに保つための実践的なアドバイスや、自分らしく仕事に集中できる環境作りの具体的な方法を解説しています。

仕事に振り回される日々から抜け出すために

「頼まれた仕事を後回しにしていたら、いつのまにかタスクが山積みに……」
「結局焦って片づけても上司の評価は低い」
「プライベートの時間まで仕事のことが頭から離れない」

こんな状況に陥っているビジネスパーソンは少なくないでしょう。

タスクに追われるばかりで疲弊してしまう、そんな悪循環から脱するためには、まず「仕事とは何か?」という問いを会社視点と自分視点の両面から改めて捉え直してみることが大切です。

会社視点での「仕事」

ピーター・ドラッカーは、企業の本質的な目的を「顧客の創造と維持」に置き、組織はその目的を実現するための仕組みだと説いています。

また、マックス・ウェーバーは、組織は明確な階層構造、定められた規則、そして専門化された役割分担に基づく官僚制のシステムとして、効率的な運営を目指すと説いています。
つまり、会社組織はビジネス目標を達成するために存在し、そこでは、“決められた機能や役割を効率的に果たす”ことが重要視されます。

タスクを正確かつ効率的に遂行する

会社視点では、いかにミスなく・スピーディーに業務を完了させるかが大きな評価ポイントになります。

他部署・他者と連携する際の“中継点”

多くの仕事は、複数の部署や人が連携して進めるものです。
自分の業務の前後には他の人が担当している仕事があります。
そういった意味で、自分の仕事は誰かの仕事と仕事を連携する中継点になっています。

客観的な成果で評価される

組織的には「達成した数字」や「具体的なアウトプット」で評価が行われます。
どれだけ苦労したかといった主観よりも、目に見える結果が重視されます。

自分視点での「仕事」

会社から与えられるタスクを行うだけでは、本当の意味での“仕事”とは言えない――そう感じる人も多いでしょう。
自分視点で仕事を捉えるとき、“自分を介するからこそ生まれる価値”が大切な要素になります。

自分ならではのアイデア・創造性

たとえ同じ作業でも、「自分だからこそ出せる価値」「自分にしかない経験・スキル」が盛り込まれると、仕事にオリジナリティが生まれます。
ここにこそ働く面白さがあり、「やらされ仕事」から「自分発信の仕事」へ変わっていきます。

仕事を通じて自分の人生を豊かにする

仕事は収入を得る手段だけでなく、スキルアップや自己実現、社会貢献の手段でもあります。
「この仕事をやっている自分が好き」「達成感がある」と思えることは、プライベートも含めた人生全体の充実感を高めます。

「ただ作業をする」から「自分を活かす」へ

小さなアイデアや改善提案でも、自分の手で仕事を“創っている”実感が得られると、モチベーションがグッと上がります。

仕事に侵食されない人生をつくる

私たちの人生は、本来もっと自由で豊かなものです。仕事に自分の人生を支配されるのではなく、「仕事を利用して楽しい人生をつくる」という発想を持つことが大事です。

そのためには、仕事を抱え込みすぎてモヤモヤやイライラが募る状況を「不健康」だと認識し、そこから抜け出すための行動を起こす必要があります。

仕事を”抱え込まない”ための実践ポイント

ここで押さえておきたいのは、会社視点と自分視点をうまく切り替え、双方に必要なことを最適化するという考え方です。

まず、仕事を「素早く完了させる仕事」と「クリエイティブな仕事」の2つに分けましょう。

  1. 素早く完了させる仕事(会社が求める機能を満たす仕事)
  2. クリエイティブな仕事(自分を介するからこそ生まれる価値を提供する仕事)

「素早く完了させる仕事」を即処理する

会社視点では、どれだけ迅速かつ正確にタスクを回せるかが重要です。
自分が“中継地点”であることを意識し、すぐに終わる仕事は最優先で片づけましょう。
手元に仕事を抱え込まないことで、自分自身の頭をすっきりさせることができます。

■素早く完了させる仕事のための実践アドバイス

  • 依頼直後に着手する
    手がつけられるタスクは、ため込まずすぐに着手する。
  • タイムマネジメント法の活用
    ポモドーロ・テクニックやタイムボックス法などで集中力を維持する。
  • 優先順位と締切の設定
    タスクごとに優先順位や締切を明確にし、スケジュールに組み込む。
  • 定期的なタスク棚卸し
    1日の終わりや週の始めにタスクを見直し、進捗をチェックする。
  • マルチタスクを避ける
    1度に複数のタスクに手を出さず、ひとつずつ片付けることで効率と集中力を高める。
  • テンプレートの活用
    定型的な作業は、文書やメールのテンプレートを作成しておき、作業時間を短縮する。
  • 作業環境の最適化
    デスク周りやPCの整理整頓、必要なツールのショートカット配置などで、すぐ作業に取りかかれる環境を整える。
  • メールや通知のチェックタイムを固定
    一日の中でメールや連絡のチェックタイムを決め、気が散らないようにする。
  • 反復作業の自動化
    定型の作業は、可能な限り自動化ツールやスクリプトで処理し、手動作業を減らす。
  • 早めの確認プロセスの導入
    完了前に短い確認を行い、修正や手戻りのリスクを低減する。

「クリエイティブな仕事」は頭をクリアにして取り組む

自分視点では、“自分が介在するからこそ生まれる価値”を最大限発揮できるか否かが重要です。
簡単に終わるタスクを後回しにしていると、気がかりが増えて集中力が削がれます。
すぐに終わる仕事は先に片づけてしまい、クリエイティブな仕事を始める際には余計な気がかりを一掃しておきましょう。

■クリエイティブな仕事に取り組むための実践アドバイス

  • アイデア「寝かせる」時間の確保
    発想がまとまらないときは、あえて休止期間をスケジュールに入れる。
  • 視点転換のための散歩タイムを確保
    自然の中やオフィス外での短い散歩で、頭を切り替え新たな発想を促す。
  • ディスカッションパートナーとのアイデア交換
    同僚や友人と意見交換し、互いのアイデアを磨き合うセッションを定期的に持つ。
  • 異分野からの刺激を得る
    興味深い本、アート、音楽、映画など、仕事とは別の分野からインスピレーションを得る時間を設ける。
  • マインドマップの活用
    頭の中のアイデアを視覚化するために、マインドマップツールを使い、思考を整理する。
  • クリエイティブなリサーチタイムの確保
    関連情報を調べたり、資料や論文、業界のトレンドに目を通す時間を意識的に確保する。
  • 作業環境の変化を取り入れる
    カフェや図書館、コワーキングスペースなど、普段とは違う場所で作業してみることで、柔軟な発想が生まれる。

仕事と人生をどう結びつけるか

仕事はあくまで人生の一部であり、「仕事を利用して自分の人生を豊かにする」のが理想的な関係性です。
ところが、山積みの仕事を後ろ向きに抱え込むと、プライベートの時間まで心が休まらないばかりか、クリエイティブなチャレンジをする余力も失われてしまいます。

  • 会社視点の成果をきちんと出しながらも、自分視点の満足を得るために、タスク整理や効率化、コミュニケーションの工夫を惜しまない。
  • この両輪がうまく回ることで、“やらされ仕事”から“主体的に楽しめる仕事”へと変化していきます。

この視点を持つだけでも、日々の仕事や時間の使い方が変わり、結果的にパフォーマンスの向上や自己満足度の高まりにつながるでしょう。
「自分らしさ」を仕事にこめ、クリエイティブに働くことができれば、きっと今よりずっと充実した日々を送れるはずです。

執筆者

堀井 悠

スターバックス、学習塾、リクルートを経歴し、大手・ベンチャーのカルチャーを経験。 人材組織開発コンサルティング企業で、自動車メーカー、食品会社、スタートアップ事業で企画、開発、講師を経験。 独自の理論「腹割り対話でつくる組織変革」を提唱。 モットーは「あした、また、がんばろう」と思えるチームを増やすこと。

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