こんにちは。アンドア株式会社の堀井です。
スターバックスでのバリューに基づく接客、リクルートでの広告販促支援などの過去のキャリアと、
今取り組んでいるファシリテーションの結節点。それは
人とチームのリ・ブランディング
このコピーができてから、ストンと腹落ちした感じがしました。
リ・ブランディングの必要性とメリット
ブランドについて3つの観点で眺めていきましょう。
「ブランド」と聞いてイメージするものは、ロゴデザインや斬新なキャッチコピーです。かつての私はそうでした。
しかし、それらはブランディングのごく一部に過ぎません。
ものの本によると、ブランドとは
「頭の中の確固たるイメージ」
上條憲二,ブランドマネジメント入門(2022)
「相手との約束」
博報堂コンサルティング
と定義されています。
したがって、意匠など目に見えるものはごく一部であり、企業のパーパスから日々の判断や行動に至るまでを一貫させるものが「ブランド」になります。これが1つ目の観点です。

パーパスを日々のコミュニケーションに浸透させることがなぜ重要なのかは、以下を参照ください。
もう2つの観点を眺めて、ブランドについての解像度を上げていきましょう。
以下は、デザイン会社btraxによる有名な比較図です。

https://blog.btrax.com/jp/marketingvsbranding/
自分から「僕は頭がいいです」と発信するマーケティングやアドバタイジング(広告)と違い、ブランディングは相手から認知されている状態のことを指します。
従業員エンゲージメント、顧客ロイヤルティなど、世の中には愛着を測る言葉がいくつもありますが、「ブランディング」を使って整理すると、
■アウターブランディング・・・顧客との約束(事業開発など)
■インナーブランディング・・・従業員との約束(組織開発など)
このように、1つの「ブランディング」という概念で違う方向に使い分けをすることができます。最近では顧客企業とこのような概念の整理を行なって活動を伴走しています。これがブランドの2つ目の観点です。
最後の3点目に、ブランディングの有無を比較したものを眺めてみます。

ブランドが相手(対周囲)に伝わることで、敢えて選んでもらったり、価値を感じてもらえるため、高い値付けで長くビジネスを行うことができます。
一方でブランドが相手に伝わっていない場合は、「誰でもいい」中から選ばれることになり、買い手の都合に左右されることが多いわけです。
こうしたアウターブランディングの差は、経営や営業を行う方は日頃から重要視していることだと思います。
着目したいのは「対自分」です。個をブランディングすると、自分ならではの持ち味を生かして探求します。研修講師で成功している方や、最近のYouTuberを観察しても、その人にしかない持ち味やレアな能力を訴求していることが特徴です。
また、well-beingにおいても差があります。
結果論とも言えますが、自分ならではの探究によって周囲から選ばれ続ける仕事とは、やりがいと面白さを感じるものです。
それが心の充足感につながり、さらなるパフォーマンスの発揮に向けた好循環を生み出すのではないでしょうか。
以上がブランドの必要性とそのメリットの説明です。
ブランディングによる人材開発の成功事例
私がブランディングを体感したのはスターバックスで働いていた時のことです。大きく2つの出来事が印象に残りました。
1つ目は、当時顧客満足度調査で日本一に輝いた店舗に修行させてもらったことです。
この店舗はパートナー(従業員)の関係性がとてもよく、常連客と名前で呼び合う独特のコミュニティを形成していました。
今振り返ると、「スターバックスらしさ」が日々の行動の隅々にまで浸透していたと思います。その浸透の構図は以下の通りです。

厳密には、purposeなどの概念を用いたわけではなく、概念の整理のためであることをご容赦ください。
ここで着目したいのは「翻訳」です。
会社のブランドを、自店舗の貢献対象や貢献領域に合わせて「翻訳」する。それによって、自分たちの判断・行動を導き、従業員は一体感と成長実感を感じながらサービスの提供が行われていました。
ブランドを自店舗に合わせて翻訳したものを【職場の共通目的】と表現します。「職場ミッション」と表現する方もいます。

この【職場の共通目的】が個人の目標にどのように作用するのかを示したものが上図です。
結論から申し上げると、【職場の共通目的】を個人のwill(意志や興味関心)とskill(技能、能力)とで重ね合わせて目標を作ります。これが、個人もチームも納得した目標となるわけです。
人材開発の現場でよく聞くお困りの事象を整理すると以下のようになります。
個人商店化・・・【職場の共通目的】が未定義
やらされ目標・・・「個人のwill」が未定義
押し付け目標・・・「個人のskill」が未定義
ブランディングを体感した2つ目の出来事は、バリスタトレーニングのための一斉閉店です。
お客様に完璧なエスプレッソをお楽しみいただく『スターバックス体験』を強化するため
閉店の目的を上記のように説明しました。ここにアウター/インナー共にブランディングの強いこだわりが見られます。
具体的なワークや討議の中身は守秘義務があるため割愛しますが、一スタッフであった私にとっては、
『スターバックス体験』を知っているつもりで、できていなかった
ことを痛感するものでした。
したがって、ブランディングによる人材開発は
1)職場と個人の一体感や成長実感を強め、自律的な判断・行動を促進するアクセルの側面
2)判断・行動がぶれ始めたときに立ち戻るブレーキの側面
2つの側面があると考えます。
リ・ブランディングの具体(個人編)
企業の研修においてリ・ブランディングをどのように進めるのか。個人編とチーム編の2つでお伝えします。
まず、個人編の学習アジェンダは以下のように整理できます。

業界の人間としての反省も込めてお伝えすると、従来のキャリア学習では理論の妥当性や経験の棚卸しに多くのリソースを割いていました。
ところが、経験を意味づけしたり、今後の目標設定は個人任せであったり、上長との対話に委ねる側面が強いのです。
では、研修の場を離れて十分な目標設定の対話が行われているかというと、首を縦に振る人は少ないのが実情でしょう。よって、後半2ステップに大きな課題を残していました。
そこで、私たちは【パーソナル・ブランディング】を軸に経験の意味づけや目標設定・習慣変容を支援します。そこで重要になるのは
1)提供価値を考える
2)解決価値を考える
この2軸です。

1)提供価値を考える
端的にいうと、自分ならではの「レア」は何かを考えることです。
特技、興味関心、探究テーマなどで、他の人にはできない「レア」を考えていきます。
2)解決価値を考える
これまでの豊富な実体験やデータ収集によって、顧客の声や問題の本質である「インサイト」が何かを考えることです。
生い立ち、境遇、蓄積したデータなどから、多くの人が困っている「インサイト」を考えていきます。
リ・ブランディングの具体(チーム編)
職場のブランディング(らしさ)を話し合う意味は、有名な成功循環の考えを借りると、
1.関係の質向上・・・俗にいうチームビルディング
2.思考の質向上・・・行動規範やルールづくり
3.行動の質向上・・・成果表彰やベストプラクティス勉強会
というように整理できます。
ここでも業界人としての反省を込めてお伝えすると、以下のようなサービスの現状が存在します。

関係性構築や相互理解を図る「1.関係の質」への介入は豊富にあるものの、思考や行動となると加入が薄くなる。
これが企業におけるワークショップの現状であると、反省的に考えています。
そこで、ブランディングの考えを活用して、一つ一つのワークで言語化と合意形成を繰り返しながら、チームのブランドである「私たちらしさ」を形作っていきます。

個人編との大きな違いは、自事業や自職場という大きな概念を具体化することです。そこで、外的資源分析、内的資源分析の2つを通じて、自事業や自職場の解像度を上げていきます。
その後、「レア」と「インサイト」で注力する行動に焦点を当てるプロセスは、個人編と共通します。
ただ、ここまでのプロセスは【アウターブランディング】に傾倒しがちです。そこで、パーソナルブランディングと並行してワークした場合、【インナーブランディング】を設定することができます。

私がこれまでチームリーダーやマネジャーを経験した観点から申し上げると、
1.アウターブランディングを作る
2.インナーブランディングを作る
この順序をお勧めします。
これを逆にすると言語化が難しかったというのが正直な感想です。
その理由は
1.せっかく作ったインナーブランディングが無視されるor作り替える必要が出てくる
2.そもそもアウターブランディングを発揮するためのインナーブランディングである性格が強い
この2つと感じています。
DX推進・雇用延長には、リ・ブランディングを
昨今耳にするDX推進、雇用延長。その共通点はリカレント教育の必要性です。しかし、蓋を開けると形だけの教育と呼ばざるを得ないと聞きます。
形だけの座学、表計算ソフトの使い方、LMSを使った深度別学習。
どれも本来は必要なはずの教育。それが「形だけ」になっていることの本質は、「ブランド」が不明瞭になっていることが原因だと考えます。さらに、「ブランド」の不明瞭は、あきらめへと繋がってしまうのです。

©︎アンドア株式会社
これまでにお伝えしてきたブランディングの考え方と、人材開発における有用性を活かし、私たちは誰もが自分らしさを再定義し、活躍し続けるご支援をしていきたいと心から願っています。
©︎アンドア株式会社
私がなぜ”リ”・ブランディングという表現にこだわっているのか
それは、人には元々ブランディングがあるはずだと信じているからです。
採用面接を受けるときに語った「志望動機」。
いや、もっと昔、子供の頃に親や先生に褒められた「持ち味」。
それは間違いなくブランドでしょう。
世の中が目まぐるしく変化し、忙しく働く中で、そうしたブランドが見えなくなっているだけであり、必ず一人一人に固有のブランドは存在するはずです。
人には固有のブランドがあり、いつからでもそのブランドや能力は進化することができる。
私は仕事をする上で、このポリシーを共有することを最も大切にしています。